アメリカのとあるプログラムは、過度に浸食されている農地に対して、当局承認の土地管理プログラムを実施しない限り、政府からの利便を与えないという仕組みになっている。
この土地管理プログラムの目的は、浸食による土壌の消失が、自然のプロセスで土壌が形成されるスピードを超えないようにすることだ。 高度産業経済においては、そしてポストエ業経済においてすら、人々は「情報」が魔法の資源だという。

しかし、情報を食べることはできない。 情報が研究や応用を通じて実際に使える知識になって初めて、われわれの食糧になりうるのだ。
近年情報セクターの売り込みが激しいが、その中でも農業や農業研究の重要性を忘れてはならない。 農業を研究しても、革命的な新発見をして、「はい、ごらんのとおり」と食糧問題を一挙に解決できることはおそらくないだろう。
しかし、世界が食糧不足の時代を迎えつつある現在、どれほど小さなものでも技術の進歩はこれまで以上に重要になるだろう。 豊かな社会の食生活やライフスタイルを見直すことも、食糧安全保障に効果的である。
食糧不足が拡大するにつれて、動物性蛋白質をたくさん消費する食物連鎖の上部に位置する食生活は、環境面で高いコストを払わなくてはならない。 たとえば、アメリカ人は平均して、年に800キログラムの穀物を、主に家畜産物という形で摂取している。
対照的なのがインドで、200キログラムである。 この場合、そのほとんどを直接穀物として食べていることになる。
われわれのような豊かな国の人たちは、これまで食物連鎖の上へ上へとのぼってきたが、今日では、健康上の理由から下がっていった方がよい人々もいるだろう。 「一人残らず菜食主義者になるべし」といっているわけではないが、食生活を改めて食肉の消費を減らせば、家畜や家禽類の飼料に使われる穀物も減らせる。

食物連鎖を下りてくれば、必要な穀物を減らせるだけではなく、自分自身の健康も改善できる。 先進国の病気や早死のほとんどは、脂肪分の多い肉の食べ過ぎが原因となっている。
現在のように脂肪分の多い肉を食べ過ぎると、どのように健康に悪影響を与えるかを調べ、国民への啓蒙プログラムを行うことで、食物連鎖を下りていく動きを促進できるだろう。 ライフスタイルを考え直すことは、より大きなグローバル・コミュニティに対する自らの責任を認識するということだ。
自分の小さな世界を超えて、広い世界を見るということ。 そして、われわれ一人ひとりが、安全な環境を守らなくてはならないことを理解することだ。
食生活のあり方、水の使い方、消費の仕方、ゴミの捨て方の一つひとつが、食糧生産と生態系のバランスを安定にも不安定にも傾ける。 そして、企業のリーダーも中核的な役割を果たすことになる。
食糧生産を増やし、水利用の効率を上げるための新技術は、多大な投資機会を提供するからだ。 以上、来世紀に向けて食糧安全保障を確保するための手だてをいくつか述べた。
しかし、最も根源的な問題に対して実効のある取り組みをしない限り、どの手だても使えないものか、あまり役に立たないその場しのぎの解決法になってしまう。 前述したように、気候と人口を安定させることこそが、人類が直面している最も重要な課題である。
気候変動は食糧問題の供給側に影響を与えるし、人口問題は需要側を左右する。 単純明快な計算だが、地球上に人口が増えれば増えるほど、必要な食糧も増える。

今後50年間に33億人の人口が増加するならば、さらに膨大な食糧が必要になる。 繰り返すが、現在の状況を大局から見れば結論は明らかだ。
人口を安定させなければ、食糧安全保障は得られない。 そして食糧安全保障なしには、長期的な経済発展や繁栄は不可能な話だ。
ここのあちこちで、「持続可能な経済を作るには、様々な面から人口問題を考えなくてはならない」と述べてきた。 しかし、世界人口の増加は、単に数多い問題のなかの一つではなく、中核に位置する問題である。
発展途上国の中には、現在の人口の2倍3倍に達する可能性のある国もある。 発展途上国の人口増加に歯止めをかけられなければ、「ベター・ライフ」への夢も夢で終わってしまうだろう。
世界の人口が増え続けると世界経済の産出量も特に急激に工業化しているアジアの国々で伸び続ける。 しかし、この成長が環境を踏みにじることで得られるのだとしたら、伸びは早晩終篇するだろう。
経済を支えるサポートシステムが崩壊したら、長期的な経済成長は維持できないのである。 進化の歴史を振り返ると、人類という種を絶やさないためには、高い出生率が必須条件であった。
病気や猛獣にやられる危険を考えると、たくさんの子どもが必要だったのだ。 しかし、今ではどうだろう?かつては生存の鍵を握っていた高い出生率が、現在ではこの文明を維持できるかどうかに対する最大の脅威となっている。
人間が自分たちで努力して人口の安定をはからないと、やがては、自然が新しい病気や広範な飢鰹を通じて人口増加を止めるだろう。 地球の収容力をずっと超えた無理を続けていれば、自然が黙って人間と人間を支える地球の能力のバランスを取り戻す責任を取るだろう。
人口増加こそが本当の問題なのだと、ことさら強調する必要もないかもしれない。 もうすでに多くの人が取り上げ、書いているからだ。
それでもなお、この問題がどれほど現実的なものか、そして切迫しているかということに耳を貸さない人もいる。 またそれ以上に多くの人が、これまで進んできた道を変えたくないとか、どうしてよいかわからないと思った時有名なSF作家、Aがおもしろい計算をしている。
これを見ると、人口増加問題の大きさがよくわかる。 「世界の人口が、年率2%で1800年間増え続ければ、人間の質量は地球の質量を超えてしまう」というのだ。

つまり、たったの1800年で、この惑星より上に乗つかっている自分たちの方が重くなってしまうのである。 実際にはこのようなことは決して起こり得ないが、基本的なポイントは重々承知できるだろう。
人口増加は本当に大問題なのである。 もう一つ、シンプルだがわかりやすい計算がある。
ある国の人口増加率が、年に3%だとするとたったの1世紀の間に人口は20倍になってしまう。 20%増ではなく、20倍である。
3%ずつ増加すると、24年で人口は倍増し、48年で3倍になる。 72年で8倍になり、96年で16倍になる。
あと4年で20倍というわけだ。 もし日本の人口が年率3%で増加したら、2098年には25億人になる。
現在の中国の人口の2倍だ。 興味深いことに、日本では、「日本の人口が安定するといわれてもうれしくない、困ったことだ」と考える人が多い。

高齢化社会とか、勤労層の減少とか、経済成長の落ち込みとか、人口増加が緩やかになるとこんな悪いことばかりが起こる、という話をする。 しかし、人口増加が緩やかになって最後に安定することを、決して問題としてとらえるべきではない。
現実には、人口を安定させる以外に持続可能な経済発展は続けられないのだから、日本の進んでいる方向は正しいのである。



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